岸部露伴論

一般的に漫画家というのは少し変わった職業という風に考えられているようです。
夜な夜な空想的な絵空事を考えては漫画を描き、それを仕事とする人達。
職業漫画家という人が知り合いにいる人は少ないでしょう。


しかし実際は漫画家というのも普通の人です。普通に生活して、普通に漫画を描いて、普通に日々を過ごしています。
漫画の内容のように奇想天外な振る舞いをし続けているわけではありません。
そこで何人かの漫画家は、「漫画家も普通の人です!」と主張します。例えば漫画内に漫画家を登場させる。漫画志望の青年を登場させる。彼らは作者のコピーのように極めて常識的に行動し、よく気が弱い人物として描かれます。
これは大体小説家にも当てはまります。小説家という仕事も世間からは変わった仕事と考えられており、また小説では主人公が小説家、という設定が頻繁にみうけられます。


と、ここで荒木飛呂彦の登場です。
普通の漫画家なら上のように、漫画家は常識人として登場させますが、何しろ荒木飛呂彦荒木飛呂彦なので、その先入観を利用してあえてその逆の事をします。逆に極端な事をする天邪鬼と言ってもいいでしょう。


かくして杜王町に岸部露伴は登場し、常識外れのブッ飛んだ行動をし、熱い漫画論をブチまけ、蜘蛛の腹をさいた苦しみを観察し味もみておこうピチャピチャとなるわけであります。
これを目撃した康一くんが「や…やっぱ漫画家って変わった人間なんだなあ〜〜ッ」と言うのは荒木飛呂彦一流の自嘲的ギャグなのでありましょう。
ご静聴ありがとうございました。