東京大学のアルバート・アイラー

濱瀬元彦 : モーダルなジャズを施法、つまり音階によるジャズだと言う人が多いですが、それは一面しか捉えていない見方で、実際には sus4 の音響の拡大という点に本質があります。

p297

このたった一文のインパクトの大きい事よ。


モーダルなジャズは施法ではなくビル・エヴァンスマイルス・デイヴィスが広めた sus4 、注釈によると「 IIm7 → V7 という動きで IIm7 の短七度( V にとっての完全四度音程)が次の V7 の長三度に半音下降の解決を行わずにそのまま保たれる状態を sus4 (Dominant 7th suspended fourth) という。」*1によって音楽世界が拡大化したものであり、その世界は下方倍音列領域の世界と似通っている。というのだ。


な……なんだってー!


過去何回か読んでちんぷんかんぷんだったけれど今回は少しはニュアンスを嗅ぎ取れる程度位までは読めたような気がする。ブルーノートスケールが何故ミストーンに聞こえないのか?という疑問を解くため下方倍音列に注目し、それの独自の理論化を進めていったら新しい世界が開けてきてその手法でブルースに限らずビバップモダンジャズまで解明できる所に手が届こうかという位までも進んでいる、と。


理論を構築し学んでいけば優れた音楽を作れるようになる、っていうわけでは必ずしもなくて、あと大事なのは先人達アーティスト達は既にそれを用いた傑作の曲をいくつもいくつも理論+経験から書いていて、今その音の裏づけ、(主に)数字で表される音の実証性、理由付けがされているのであり、つまり天才の所業を天才が別のやり口であばいているといった感じで素人の俺がこれを読んで何が出来るかというと見事に何もできないんだよね。


C コード弾いて次に Fm コード弾いてああ倍音から導き出される強度的にはこの 2 つのコードの強度は同じなのかー下方倍音は弦を鳴らしても聞こえないけどねとへーって思ったり c と g の二音とその第五倍音までの上方倍音と下方倍音から導き出される C ハーモニックメジャースケール弾いてうーんこれがバランスの取れたスケールなのかー短六度であやしげな民俗音楽にしか聞こえねーって思ったりするぐらい。
そういえば『ブルーノートと調性』には理論がどう響くのか演奏して示してあるらしいから買ってみようか、でも高いし絶対分かんねー。


そしてこういうダラけた姿勢にも活を入れる先生。と菊池さん。
>個々人は現実の問題を、時間をかけて個別に解いていくしかないのです。
全くそうです。

*1:ブルーノートと調性』濱瀬元彦著(全音楽譜出版社)184p より抜粋