シグルイ(11)

読みました。
頑之助編おもしれー!

以下感想。ネタバレあり。

まず自分がどこまでシグルイを知っているか。

原作 駿河城御前試合 は未読です。ネタバレが嫌だったもので*1。ただ、ちらっと立ち読みした限り、原作はけっこう文体が大人しい、虎眼先生が狂ってない*2、など、そこまで今すぐに読みたいとは思いませんでした。これは後で詳しく触れるけどコミカライズされた原作に対する期待の持ち方に誤りがあったのだと思います。
そして平田弘史先生の 駿河城御前試合[上巻] は持ってます。これは無明逆流れは収録されていないので安心。愛読してます。

シグルイは第一試合以外もするつもりだったのか?

これはやらないと思ってました。まず一番試合の無明逆流れにこれだけのキャラの密度がある以上、原作には十一試合あるがとてももたないだろうと。勢いも盛り上がりも試合を最後に一斉にやるとすると待たされすぎるし。
第一試合で既に虎眼先生をはじめとして、虎眼流門下生、舟木兄弟、濃尾三天狗、幕僚の面々、とキャラが充実しすぎているし、たしか若先生が原作 駿河城御前試合を読んでシグルイを始めるまでに 7 年の構想があった*3はずで、だからこそ、ここまでこれだけの高密度でやってこれたのだ、長期連載となると後半構想も尽き、失速もしてしまうのでは ? と思っていました。
という事で他の試合の面々は脇役として出すだけだと思っていました。不殺剣の月岡しかり、ガマ剣法の堀木頑之助しかり。


しかし何かの若先生のインタビュー記事では、正確には覚えていませんが

全ての勝負を描くかどうかはまだ決まっていない。
実はあまり先のことは考えないで描いている。

と話されてて、少し驚きました。

連載を追って

チャンピオンRED は購読していないので、 http://www.h5.dion.ne.jp/~ikeruze/ さんや2chでなんとなく展開を聞いていると、本格的に蝦蟇剣法編に入った、しかも千加がふたなりだとかしかもしばらくするとまた源之助編に戻ったらしいとか聞き、悪い言い方になりますが、引き伸ばしにかかったのか(今までもオリジナルエピソードを随所にはさんできてはいたが流れは繋がらずともシグルっていたので全ては OK だった)、いらぬ寄り道だったのではないか、と心配になっていたわけで。

そして実際読んで

頑之助編おもしれー!
いやいやいやいや頑之助編面白いですよ。頑之助のキャラメイクも光ってます。
ふたなりについては半陰陽ではなくまだ常識的に納得できる巨大陰核でした。ふたなりとか聞いたときはすわ若先生ご乱心かオタ文化に下手に踏み込むとケガをしますぞと思ったもののむしろ若先生側のフィールドの現象でした。良かった良かった(のか?)。また、このエピソードは通常ならざる身体という頑之助の千加への共感を得るエピソードにしては奇抜すぎそれだけに留まらない設定な気もしますがまあいいです。千加はおどろかわっこいい*4ですから。

コミカライズ

前々から思っていたことですが、「小説的面白さ」と「漫画的面白さ」更に言うなら「映画的面白さ」は別のものだと思うんです。
小説はエピソードで魅せますが漫画や映画はよりアクションで魅せる傾向にあります。小説を漫画化するにはそこの所をうまく理解してデフォルムしないといけません。
そこのところがよく分かっているのが、自分の知る限りでは バトルロワイヤル や 花の慶次 で、漫画で面白く魅せるために、拳法家の杉村は桐山との戦いで奥義に目覚め気を操るし、花の慶次では原作ではただの前田家の忍者の棟梁である四井主馬が漫画では手にカギ爪を仕込んでヒャハハと叫ぶ雑魚となるわけです*5
そこでこのシグルイですよ。原作(平田版しか読んでいないけど)では舟木一伝斎が兜を投げる掛け声を低く、タイミングをずらし頑之助の邪魔をする場面。タイミングをずらすどころか、怪力で頑之助の顔面に全力シュート。そこで「戦場に於いて敵の兜が」「己の欲するように程よきところに飛び来ると思いよるか」。潰れるガマのイメージ。凄い。これぞコミカライズの鑑。
千加も原作では大人しいヒロインの筈なのに親の愛馬の腹を割き持ち上げて奥ゆかしい抗議、ですよ。千加は 覚悟のススメ のササラみたいでかっこいいね。
あとガマの見てる世界がどんどん異質なものになっていくという描写も素晴らしい。世界はそれを気違いと呼ぶんだぜ。あとガマ剣法が原作を更に超えたトンデモ剣法になっている件。これもコミカライズのなせる技です。多分。
なお、原作(平田版)では剣遣いの権八郎が頑之助に敗北し、御前試合では槍遣いの修三郎が頑之助と対峙するはずが、槍遣いの権八郎が敗れてしまった。御前試合では屈木頑之助と千加の対決になるのだろうか。

最後に、確か昔インターネット殺人事件さんで読んだ駿河上御前試合感想によるとガマが主人公なのは平田先生オリジナルだとか読んだ覚えがあるので、シグルイもそれに沿っているんですかね ?

各話感想

  • 第五十四景 上意
    • 後に陰腹を召す鳥居土佐守。シグルイ世界では忠長抑制にはたらく代表みたい。
    • 忠長が怒ってるのはそんな面白そうな事にちくしょう見に行けば良かったっていう逆ギレですかね。いや逆ギレというかなんというか。
    • 時代小説を少しでも読む人には分かることだけど白装束は死ぬ用意が出来ているという事ですね。二人とも腹を召すつもりで臨んでます。
      • 「上意」!自決する権利をも剥奪し再戦を無条件で義務付ける!
  • 第五十五景 兜
  • 第五十六景 合戦
    • >可憐なる抗議である>可憐なる抗議である>可憐なる抗議である
    • 兜を投げつける際、わざわざ舟木家固有スキル「怪力」(多分 str+20 )を使う一伝斎。
    • メメタァ
    • 「戦場に於いて敵の兜が」いや超高速で顔めがけて飛んでもこないだろうよ。
  • 第五十七景 瘡蓋
  • 第五十八景 大蛇
    • 笹原修三郎が大蛇を退けたのは分かった。しかしその従兄弟の権八郎が蛇面なのはなんの因果だ。
    • 蛙男と蛇男に求婚される千加。
    • 笹原権八郎がゾッドにしか見えない。こいつ絶対使徒だ。
    • 「かなり肝を冷やしたが」「蛙に蛇(スネイク)が敗北するわけがない」わけが…な……
  • 第五十九景 幻影肢
    • 源之助がいい感じに窮し凄い形相になっている。

三重

ヒロインの一人三重に対して話そうかね。俺はこのお方が一番怖いよ。あの日生まれ出でた怪物の一人ですからね。
武家の娘として産まれ、虎眼先生の元で相当抑圧された子ども時代を過ごし、母親は自害、伊良子清玄を男として認めるもその日に行方不明。この頃から精神を病み始める。顔を切り裂かれた雄雛は清玄か。セミの死体は自身の心か。虎眼先生死亡時のあの行動なんか相当いっちゃってて、当の清玄からはスルー。源之助と清玄の決闘時も途中曖昧になってたし。親譲りか。今は正常な面がずっと出てるけどふとしたはずみに病んだ精神が出ると一番怖いですよ。

*1:ニコニコ動画でアニメをちらっと見たとき、コメントでネタバレされて知ってしまったが

*2:「なあいくや。三重の嫁は藤木のやつと伊良子のどちらがいいかのう」とか言ってる。

*3:シグルイ 3 巻巻末

*4:おどろおどろしい + かわいい + かっこいい

*5:花の慶次は実はあまり読んでいません。少し読んだ中でここが気になっていたので