宮部みゆき『火車』読了
面白かったです。久しぶりにまともないい小説を読んだという気がしました。読み終わった時のこの満足感は良いものです。
ミステリという言葉も知らなかった子どもの頃は、図書館にあった少年探偵団シリーズをあるだけ読んだだけでした。
そしてネットをするようになってから、推理小説ではなくミステリという言葉がある事、ミステリ読みというちょっと気持ち悪い人達がいる事を知りました。ほうほうそれでそれで、と興味が湧いた有名とされるミステリを買って読んでみたわけです。そしてそれが
殊能将之『ハサミ男』、『美濃牛』、『黒い仏』、清涼院流水『ジョーカー』、『コズミック』、夢野久作『ドグラ・マグラ』
というラインナップであったため、もう何が何やら分からない状態にあったわけで。
この小説もミステリ云々という文脈に名前が挙がっていたのでさて今度はどんな奇書だろうと少し構えながら読んだわけですが実にまともな、面白い小説でした。がっかりしたのかそれともほっとしたのか自分でも良く分かりません。多分ほっとした方が強いんじゃないかな。ミステリに光と陰があるとするならばこれはおそらく光の方なんでしょう。
これを言うのは三度目ですが、実にまともな面白い小説でした。万人に勧められると思います。ただ普段本を読まない人には少し長いかもしれませんが。本読みにとっては丁度いい長さでしょう。
あ、そうそう。この点にも触れておかないと。作者の宮部みゆきさんはしっかりした方ですね。
この本にクレジットカード、キャッシュカード、消費者金融、自己破産などの事について分かりやすく説明されているのだけどその紹介の仕方がとても丁寧で、多分取材をきっちりやって小説を書いておられるのだろうと思います。とてもいい仕事です。これが 1992 年の小説というのも少し頭に入れて読むといいかも。
追記
このミステリーがすごい!の 2008 年創設 20 周年記念のベスト・オブ・ベストで 1 位だったらしいですね。俺もこれを見て買った筈です。やっぱ大勢が選ぶのはこういうのになるよなあという事か。